スウィートグラスリッツェン ~ボヘミア手彫りガラス~
「グラスリッツェン」とは、ダイヤモンドパウダーをつけた針でガラスに模様を彫る工芸です。
透明ガラス、色が被せてあるボヘミアガラスなど、ガラスによってまたその表情も異なります。
テーブルウェアとしてはもちろん、飾ってインテリアエレメントとして楽しむこともできます。
彫り方や彫りの濃淡による表現方法は、絵画などとはまた違う独特の世界を創ることができます。
それゆえ手仕事として楽しむだけでなく、アートとしての可能性も併せ持つところも大きな魅力といえるでしょう。
ダイヤモンドポイント技法は、イタリアのベネチアで16世紀に始められ、17世紀以降オランダやイギリスへと広まりました。
レース編みが盛んだったベネチアでレース模様をガラスに刻み込んだのが始まりで、唐草模様などが彫られました。
17世紀にはベネチアよりもオランダで発展、技法も増えて、人物や風景などの作品が作られました。
18世紀ごろにはオランダからその技法を導入したイギリスの上流家庭で流行しました。ダイヤモンドポイント技法は、繊細で時間がかかるため、上流家庭の女性ならではの趣味だったようです。
(参考文献:「ガラス工芸」由水常男著)
現代では、ダイヤモンド針の品質も向上し、ペンを持つ感覚で気軽に彫ることができるようになりました。
ガラス器とダイヤモンド針をつけたホルダーさえあれば、テーブルなどで場所をとることもなく取り組めます。
器の内側に当てた図案をなぞるような感覚で浅く彫りこんでいきますので、絵が苦手な方にも繊細で華やかな作品を仕上げていくことができます。
音や粉もほとんど出ず、幅広い年代の方に楽しんでいただける工芸です。
クリアガラスや鏡はもちろん、真紅・深緑・黄色などのボヘミア色彩ガラス(エーゲルマンガラス)など、様々なガラスに彫ることができます。
好きな音楽を聴きながら、ゆったりと針を刻む豊かなひととき。
このうえなく幸せな時間です。
Glasritzen(グラスリッツェン)
Glasritzen(グラスリッツェン)は、Glas(ガラス)+ ritzen(傷をつける)という造語ですが、その名の通り「彫る」というより「描く」気持ちで手を動かす作業です。
箱根ガラスの森美術館に展示されている中世のグラスリッツェン作品を見ると、当時から「描くような線」で表現されていたことがよくわかります。
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